上海通信Shanghai Report

中国を正しく生き抜くための中国語講座~第96回「三得利」

2024年05月18日


イラスト:Liya

こんにちは。Beauty Works Shanghaiの清水です。

今週のサバイバルチャイニーズは、三得利(san1 de2 li4)、日本語的発音”さんだり”で、意味はサントリーです。

直接的には「3つ(あるいは3回?)利(利益)を得る」という意味になります。この中文ブランド名は、サントリーさんの音から当てはめた中国語で、事業内容を表したものではないですが、中国人が大好きなとても縁起が良い単語が並んでいて、成功事例の一つと言えるでしょう。誰もが知っている簡単な単語を並べているという点でも素晴らしいネーミングだと思います。

さて、中国でサントリーさんと言えば、ウィスキーやビールといったアルコール類というよりも、ペットボトルのウーロン茶がとても有名です。

サントリーさんは1984年、江蘇省連雲港市に外資として初のビール合弁会社を設立し、ビール事業をスタートしました。そして、この江蘇省でのビール事業を通じて、中国ビジネスのノウハウを蓄積しつつ、上海でもビール事業に取り組みました。その後、1996年に「三得利啤酒清爽」「三得利啤酒超爽」を発売。飛行船を使用した大胆な宣伝やTVCM、上海人の味覚にあった“爽快系”ビールの提供、独自の営業活動と流通政策などにより急速に業績を伸ばし、1999年には上海におけるシェアNo.1の座を獲得しました。上海での初めての生ビールの製造・販売や上海周辺の蘇州や無錫においても販売を拡大してきました。
しかしながら、2015年に合弁パートナーであった青岛啤酒股份有限公司に合弁企業の全株式を譲渡するとともに新たに製造・販売に関するライセンス契約を締結することとしました。引き続き、三得利ビールは上海、江蘇省を中心に販売が継続されてはいますが、名前だけがあるという状態で、安いだけでお世辞にも美味しい味とはいえず、サントリーの品質とブランドイメージはすでにないがしろにされている状況です。
ちなみに、ウィスキーでは、角瓶が日本料理屋や日系バーの定番となっていて、ハイボールとセットで絶大なる指示を受けています。

一方、ウーロン茶は1997年から販売がスタートしましたが、現在のように中国人にも支持されマーケットに定着したのはごく最近の話です。粘り強いマーケティング活動と販売活動の賜物だと思いますが、一方でコンビニエンスストアが急激に普及したことも、後押ししたのではないかと分析します。

そもそも冷たいお茶を飲むという習慣がなかった中国で、”原産国中国”のウーロン茶という飲み物を、日系ブランドが、ペットボトルで販売するというのは、ナンセンスだったのかと思いますし、それゆえに、長く粘り強い販売、マーケティング競争に打ち勝ち、いまの市場ポジションを獲得したこと、つまり大げさに言えば食文化を変えたという意味では、サントリーさんの努力とその功績は計り知れないものがあるとワタシは思います。因みに、ローカル仕様として、いまだに”微糖”と”無糖”があります。はい。

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文責
碧优缇商务咨询(上海)有限公司
COO 清水誉
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、関西学院大学大学院経済学研究科前期博士課程
修了、経済学修士。専門は、東アジア経済、中国労働経済。
1988年株式会社ブリヂストン入社、1993年広州事務所代表、1995年北京事務所代表、
1999年株式会社博報堂入社、2005年広東省広博報堂広告有限公司総経理などを歴任
し現職。中国ビジネス30年のスペシャリスト。
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