上海通信Shanghai Report

中国を正しく生き抜くための中国語講座~第56回「下海」

2023年08月12日


GraphicDesign:Liya

こんにちは。Beauty Works Shanghaiの清水です。

今週のサバイバルチャイニーズは、下海(xia4 hai3)、日本語的発音”しゃーはい”で、海に入るという意味なんですが、転じて、安定的な国営企業とか公務員を辞めて、独立起業して商売をするという意味です。

この単語は、社会主義中国の時代背景をとてもよく映し出している言葉です。言葉自体は一昔前、改革開放時代の流行語でして、いまの若い世代はもしかしたら意味さえ知らないかもしれません。なぜなら、現代中国は、下海こそがマジョリティとなっているからです。

中国は、いまの中国的市場経済に移行する前は、典型的な社会主義経済でしたので、私営企業というものは原則的には存在しておらず、また外資への市場開放も非常に限定的でした。大学を卒業すれば、公務員や国営企業(食べることに困らないという意味で”铁饭碗”と言われていた)に就職して一生を過ごすことが当たり前というか、それしか選択肢がなかったのです。そんな時代ですから、いくら鄧小平さんが市場経済を導入すると言っても、人々のマインド的には、勤務している親方日の丸的な単位をわざわざ辞めて、どんなリスクがあるのかもわからないような行動に出ることは正気の沙汰ではなかったわけです。社会主義的なイデオロギーからすれば、国営企業ちゅうものは破綻しないと信じていたからです。

ところが、徐々にマーケットが市場開放され、外資が参入してきて、生産性の低い国営企業が淘汰されたり、その変化のなかで、徐々に起業して大成功したりする人が現れると、今度は我先にとみんなが下海に走ります。そして、そのパッションやパワーこそが原動力となって、その後の中国経済大発展につながったとも言えます。

***************************************
文責
碧优缇商务咨询(上海)有限公司
COO 清水誉
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、関西学院大学大学院経済学研究科前期博士課程
修了、経済学修士。専門は、東アジア経済、中国労働経済。
1988年株式会社ブリヂストン入社、1993年広州事務所代表、1995年北京事務所代表、
1999年株式会社博報堂入社、2005年広東省広博報堂広告有限公司総経理などを歴任
し現職。中国ビジネス30年のスペシャリスト。
***************************************